【行政書士の書類作成】帳簿の記載事項、各種帳簿・書類の保存期間
- 行政書士がつけなければならない業務に関する帳簿
- 各種書類などの保存期間
上記について、行政書士を10年以上続けているわたしがご説明します。
行政書士には守らなければならないルールがあるのね・・・
この記事には、こむずかしい法令がたくさん出てきますので、少し読みづらいかもしれませんが、がんばって読み進めていただければ幸いです。
行政書士になった際にはさまざまな法令に触れることになります。
そのための予行練習も兼ねて読んでみてください。
行政書士業務に関する帳簿
いわゆる「事件簿」とも言われるものです。
行政書士は、受任した業務に関する一定の事項を記載した帳簿を作成し、一定期間、保存しなければなりません。
「行政書士法」という法律によって定められております。
紙媒体のものに限らず、Excelなどで作成することも可能です。
帳簿に記載する事項
行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載しなければならない。
帳簿に記載する事項は、下記のとおりです。
- 事件の名称
- 年月日
- 受けた報酬の額
- 依頼者の住所氏名
- その他都道府県知事の定める事項
「その他都道府県知事の定める事項」ってなに?
わたしが住んでいる富山県の場合は、下記の2つになっております。
- 受託番号
- 作成した書類の枚数
ネット検索では出てきませんが、「富山県行政書士法施行規則」というものに定められております。
行政書士になると、富山県行政書士会から配布されます。
法第9条第1項の知事が定める事項は、次に掲げる事項とする。
(1) 受託番号
(2) 作成した書類の枚数
帳簿に記載しなければならない事項はほかにも
帳簿には下記も記載しなければなりません。
- 職務上請求書の払出し番号 ※職務上請求書を使用した場合
個人開業の行政書士又は行政書士法人は、受託事件に関して職務上請求書を使用したときは、法第9条又は第13条の17に規定する帳簿に、その使用した職務上請求書の払出し番号を記載しなければならない。
(結論)結局、帳簿には何を記載すればいいの?
上記をまとめると下記のことになります(富山県の場合)。
- 事件の名称
- 年月日
- 受けた報酬の額
- 依頼者の住所氏名
- 受託番号
- 作成した書類の枚数
- 職務上請求書の払出し番号 ※職務上請求書を使用した場合
わたしの場合(ほかの項目の追加)
わたしの場合、上記事項のほかに、下記のような項目なども事件簿に追加して記載しています。
- 手続きに関する備考
- 担当者の氏名(依頼者が法人の場合)
- 郵便番号・電話・FAX・携帯電話・メール
- 車庫証明の申請・届出者(車庫証明の依頼の場合)
- 車庫証明の保管場所の位置(車庫証明の依頼の場合)
なぜ上記のような項目も追加しておくかというと、Excelの検索機能を使って過去に受けた事件の資料などを探し出すのに便利だからです。
過去に依頼受けたあの時の資料見たいな…
そうだ、Excelで検索してみよう!
過去の資料を簡単に探して見ることができれば、その分、今受けている依頼をよりスムーズに、より負担を少なく処理できることにつながる場合があります。
電話番号などの情報も一緒に見ることができて便利だし
帳簿の保存期間
行政書士は、上記を記載した帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖のときから2年間、保存しなければなりません。
行政書士は、前項の帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から二年間保存しなければならない。行政書士でなくなったときも、また同様とする。
領収書の保存義務
行政書士は、領収書を作成した日から5年間、保存しなければなりません。
行政書士は、依頼人から報酬を受けたときは、日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し、副本は、作成の日から五年間保存しなければならない。
上記の帳簿と同じく、紙媒体のものに限らず、Excelなどで作成することもできるよ。
ただし、領収書の保存期間については、青色申告をする場合には別の決まりが定められております。
次でご説明します。
青色申告する場合の帳簿・書類の保存期間
税制上、有利な取扱いを受けられますので、行政書士として開業する際、青色申告制度を採用される方も多いと思います。
その場合には、青色申告制度に基く帳簿・書類の保存期間が定められておりますので、注意する必要があります。
帳簿の保存期間⇒7年
下記のものは7年の保存期間が必要です。
- 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など
書類の保存期間⇒5~7年
下記のものは、それぞれ下記の保存期間が必要です。
- 決算関係書類(損益計算書、貸借対照表、棚卸表など) 7年
- 現金預金取引等関係書類(領収証、小切手控、預金通帳、借用証など) 7年
※前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年 - その他の書類(取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)) 5年
青色申告制度を採用する場合は、上記に基いて書類などを保存しなければなりません。
ここで注意しなければならないことがあります。
行政書士法と青色申告制度では、異なる取扱いをする部分がある
下記書類については、行政書士法と青色申告制度で異なる保存期間を定めております。
- 領収書
- 取引に関して作成したり受領した書類
領収書の保存期間
領収書の保存期間について、行政書士法施行規則では5年と定められておりましたが、青色申告制度を採用する場合には7年間(前々年分の所得の金額にもよる)となっております。
したがって、青色申告制度を採用する場合、領収書は7年間保存しなければならないことになります。
取引に関して作成したり受領した書類の保存期間
また、青色申告制度では、「取引に関して作成したり受領した書類(※1)」の保存期間は5年間となっております。
行政書士法では、「帳簿と関係書類(※2)」を2年間保存しなければならないと定められておりました。
上記(※1)と(※2の関係書類)は一致する可能性がありますので、この場合は5年間保存しなければならないことになります。
迷う場合は、保存期間を多めにとる
上記のように、ルールが複数存在する場合は、保存期間がもっとも長いものに合わせておけば安心です。
上記を見る限り、保存期間がもっとも長い期間は7年間ですので、ひとつのやり方として、すべての書類を7年間保存しておく、ということにすれば間違いありません。
個別に管理するのは面倒だしね・・・
ただし、すべての書類を7年間保存しておくと場所を取りますので、「行政書士法が定める帳簿と関係書類は5年間にする(青色申告する場合)」などということにしておいてもいいかもしれません。
個別の業務に関する書類の保存期間
行政書士は、以下の業務を行う場合、その業務に関する「確認記録」と「取引記録等」というものをつけなければなりません。
そして、それらは、犯罪収益移転防止法という法律によって、7年間保存しなければならないと定められております。
対象となる業務
対象となる業務は下記のとおりです(例外規定アリ)。
- 宅地または建物の売買に関する行為または手続き
- 会社等の設立または合併に関する行為または手続き
- 200万円を超える現金、預金、有価証券その他の財産の管理または処分
上記以外にも個別の業務に関する書類の保存期間が定められている手続きがあるかもしれませんので、そのあたりは常に意識しておく必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは以下の2点です。
- 行政書士法が定める帳簿には記載しなければならない事項がある
- 各種帳簿・書類の保存期間に注意しよう
仕事が忙しくなってくると、上記のことなどは、ついおろそかになりがちです。
しかし、ルールが決められている以上は、しっかり守りましょう。
また、これらの帳簿・書類などを整理・保管しておくためのアイテムも必要になります。