行政書士の仕事内容(独占業務、非独占業務、例外規定など)を詳しく解説
この記事では、法令を交えながら、行政書士の仕事について詳しく解説していきます。
- 行政書士の仕事内容
- 行政書士しかできない仕事=書類作成
- 行政書士が作成することができない書類
- 行政書士でない者が書類作成業務をできるケース
- 行政書士が書類作成以外にできる仕事
- 行政書士が作成できる税務書類など
上記内容を、10年以上行政書士を続けているわたしがご紹介します。
「行政書士の仕事内容をもっとわかりやすく知りたい!」という方はこちら▼
行政書士の仕事
行政書士の仕事は、大きく分けると下記の2つに分かれます。
- 独占業務
⇒行政書士しかできない仕事 - 非独占業務
⇒行政書士に限定されない仕事
上記業務の内容をできるだけシンプルな単語で表すと、下記のような書き方ができます。
- 書類の作成業務
- 書類の提出手続き代理業務
- 契約代理
- 書類の作成相談業務
- 聴聞・弁明の機会付与の手続き
- 行政庁に対する不服申立て手続き(特定行政書士のみ)
ただし、上記は行政書士の各仕事の内容を端的に表しただけの書き方ですので、ひとつずつ詳しく見ていく必要があります。
まずは「独占業務」から見ていきましょう。
行政書士の独占業務(行政書士しかできない仕事)⇒書類作成業務
はじめに言うと、独占業務は下記になります。
他人の依頼を受けて報酬をもらい、下記1~3の書類を作成する業務
- 官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)
- 権利義務に関する書類(電磁的記録を含む)
- 事実証明に関する書類(電磁的記録を含む)
下記で定められております。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
言葉の意味を少し説明していきたいと思います。
- 「報酬を得て」
-
お客さまからお金をいただいて業務を行うことを意味します。なので、無報酬の場合は「行政書士の仕事」とは言えません。
- 「官公署」
-
国や地方公共団体の諸機関を言います。行政機関だけでなく、立法・司法機関、在外公館を含みます。このブログでは、簡単な言葉で主に「役所」と言っていることが多いです。
- 「電磁的記録」
-
紙の書類ではなく、パソコンなどで作成された記録を言います。
- 「業とする」
-
反復継続して行うという意味です。
行政書士の仕事のメインとなるところです。
それぞれの書類がどんなものであるか、もう少し詳しく見ていきます。
(1)官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)
各官公署が提出先とされている許可・認可・届出などの書類が主なものです。
その数は1万種類以上とも言われています。
業務範囲が非常に広いのが行政書士の特徴のひとつです。
実際に行政書士がかかわっている業務例はこちら▼
(2)権利義務に関する書類(電磁的記録を含む)
私法上・公法上の権利義務の発生・変更・消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類です。
- 売買・賃貸借契約書
- 遺産分割協議書
- 各種示談書
- 定款 など
「権利義務に関する書類」と次に紹介する「事実証明に関する書類」、それら合わせた数も数千種類とも言われているよ
(3)事実証明に関する書類(電磁的記録を含む)
実社会において、事実を証明する記載のある一切の書類です。
- 実地調査に基づく図面類(配置図など)
- 内容証明郵便
- 履歴書
- 交通事故調査報告書
- 各種議事録
- 財務諸表 など
独占業務とされる根拠
上記書類の作成は「行政書士の独占業務」とされていますが、それを定めている規定は下記です。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
上記既定の最初のところでありますね。
「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。」って。
なので、上記書類の作成は行政書士の独占業務となるわけです。
「制限規定」行政書士が作成することができない書類
書類の作成をメイン業務とする行政書士ですが、そんな行政書士にも作成できない書類があります。
下記で規定されています。
行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
「ほかの法律において制限されている業務」に関する書類は、作成できないということです。
ではどんなものがあるのでしょう。
よくある例は下記ページで紹介しております。
【行政書士が作成することができない書類(例)】
行政書士が割とかかわることが多い下記4士業に関するものを見ていきます。
- 税理士の資格を要する書類
-
所得税・法人税・住民税・事業税・消費税の申告書
- 司法書士の資格を要する書類
-
- 不動産登記申請書
- 会社設立登記申請書
- 供託書
- 土地家屋調査士の資格を要する書類
-
土地表示・土地分筆・土地地目変更・建物表示登記申請書
- 社会保険労務士の資格を要する書類(昭和55年9月1日から)
-
労働社会保険諸法令に基づいて行政機関に提出する申請書・届出書・報告書など
「例外規定」行政書士でない者が書類作成業務をできるケース
まずは条文を見てみます。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
上記条文の「ただし」以降に、行政書士業務以外で書類作成業務ができるケースが2つ載っております。
- 「他の法律に別段の定めがある場合」
⇒ほかの法律により認められた者がおこなう書類作成業務 - 「定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合」
⇒総務省令で定められた者がおこなう、総務省令で定められた手続きに関する電磁的記録の作成業務
(1)ほかの法律により認められた者がおこなう書類作成業務
ほかの法律によって認められた者は、行政書士でなくても書類作成業務を行うことができます。
- 弁護士法
- 弁理士法
- 税理士法
- 公認会計士法 など
(2)総務省令で定められた者がおこなう、総務省令で定められた手続きに関する電磁的記録の作成業務
下記の者は、下記の手続きにおける電磁的記録を業として作成することができます。
電磁的記録を作成することができる者 | 対象手続き |
(一社)日本自動車販売協会連合会 | 登録自動車(登録を受けたことがなく、かつ、型式について指定を受けたもの)の新規登録・新規検査手続きおよびそれらと同時にする車庫証明手続き |
(一社)日本自動車販売協会連合会 (一社)日本自動車整備振興会連合会 | 登録自動車の継続検査 |
(一社)日本自動車販売協会連合会 (一社)日本自動車整備振興会連合会 (一社)全国軽自動車協会連合会 | 軽自動車の継続検査 |
(一社)日本自動車販売協会連合会 (一社)全国軽自動車協会連合会 | 軽自動車(車両番号の指定を受けたことがなく、かつ、型式について指定を受けたもの)の新規検査 |
これはいわゆる「自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)」に関する規定です。
簡単に言うと、自動車に関するオンライン手続きです。
対象手続きは時間の経過とともに徐々に拡大されてきていますので、今後もさらに広がっていくことが予想されます。
規制緩和だね…行政書士の仕事の減少につながるかも…
再度、条文を見てみます。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
「定型的かつ容易に」より後の部分に、ここで説明していることが載っております。
「総務省令で定める手続」「総務省令で定める者」という文言がありますので、その総務省令も見てみましょう。
ちなみに、「総務省令」とは「行政書士法施行規則」のことです。
かなり長いので覚悟してください。
これに上記の表の内容が載っております。
法第十九条第一項ただし書に規定する総務省令で定める手続は、次の各号に定める手続とする。
一 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第四条に規定する自動車であつて、同条に規定する登録を受けたことがなく、かつ、同法第七十五条第一項の規定によりその型式について指定を受けたものについて、次に掲げる申請を同時に行う場合における当該申請(自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和三十七年法律第百四十五号)附則第二項の規定により同法第四条の規定が適用されない場合にあつては、ロに掲げる申請)の手続(イに掲げる申請の手続にあつては、当該手続のうち自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則(平成三年国家公安委員会規則第一号)第二条第二項の規定による同規則第一条第一項の申請書に記載すべき事項の入力に係る部分に限る。)
イ 自動車の保管場所の確保等に関する法律第四条第一項ただし書に規定する申請
ロ 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第六条第一項の規定により同項に規定する電子情報処理組織(以下この項において単に「電子情報処理組織」という。)を使用して行う道路運送車両法第七条第一項に規定する新規登録及び同法第五十九条第一項に規定する新規検査の申請
一の二 道路運送車両法第五十九条第一項に規定する検査対象軽自動車(以下この項及び次項において単に「検査対象軽自動車」という。)であつて、同法第六十条第一項の規定による車両番号の指定を受けたことがなく、かつ、同法第七十五条第一項の規定によりその型式について指定を受けたものについて、電子情報処理組織を使用して行う同法第五十九条第一項に規定する新規検査の申請の手続
二 道路運送車両法第十三条第一項に規定する登録自動車(次項において単に「登録自動車」という。)又は検査対象軽自動車であつて、同法第九十四条の五第一項の規定により保安基準に適合する旨を自動車検査員が証明したものについて、電子情報処理組織を使用して行う同法第六十二条第一項に規定する継続検査の申請の手続
2 法第十九条第一項ただし書に規定する総務省令で定める者は、次の各号に掲げる手続の区分に応じ、当該各号に定める者とする。
一 前項第一号の手続一般社団法人日本自動車販売協会連合会
一の二 前項第一号の二の手続一般社団法人日本自動車販売協会連合会及び一般社団法人全国軽自動車協会連合会
二 前項第二号の手続次のイ又はロに掲げる手続の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 登録自動車に係る手続一般社団法人日本自動車販売協会連合会及び一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
ロ 検査対象軽自動車に係る手続一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会及び一般社団法人全国軽自動車協会連合会
上記の規定のなかにも「道路運送車両法」など、いくつかの法律が出てきますが、ここでは省略します。
ネットで検索すれば出てきますので興味のある方は見てみてください。
ここまでが「行政書士の独占業務」に関する説明でした。
次は「行政書士の非独占業務」について見ていきます。
書類作成以外に行政書士ができる仕事(行政書士の非独占業務)
こちらはさらっと見ていきますが、簡単に表すと下記のようになります。
- 行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を、官公署に提出する手続きについて代理すること
- 行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を、代理人として作成すること
- 行政書士が作成することができる書類の作成について、相談に応ずること
普段の仕事の中で実際に行う業務としては、上記1~3が一般的ですね。
そのほかには、下記のようなことも行うことができます。
あまりないとは思いますが…
- 行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞または弁明の機会の付与の手続きなどにおいて当該官公署に対してする行為について代理すること
- 行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求など、行政庁に対する不服申立て手続き代理とその書類作成(特定行政書士のみ)
ちなみに、行政書士の非独占業務は下記で定められております。
行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
上記はすべて、書類に代えて電磁的記録も含まれるよ
以上、「行政書士の非独占業務」に関する説明でした。
ちなみに、こちらも「行政書士の独占業務(書類作成)」と同様、ほかの法律において、その業務を行うことが制限されている事項についてはできません。
そのほかに行政書士が作成できる書類
行政書士は下記の書類も作成することができます。
- 一定の税務書類
- 労働社会保険諸法令に基づく申請書等・帳簿書類(一定の行政書士のみ)
(1)行政書士が作成できる税務書類
- ゴルフ場利用税
- 自動車税
- 軽自動車税
- 事業所税
- 石油ガス税
- 不動産取得税
- 道府県たばこ税(都たばこ税を含む)
- 市町村たばこ税(特別区たばこ税を含む)
- 特別土地保有税
- 入湯税
行政書士が作成する税務書類で特に多いのが自動車税と軽自動車税に関するものです。
自動車の登録業務に付随する業務だからですね。
普段はあまり意識することはありませんが、下記の規定があるおかげで、行政書士も堂々とこれらの書類を作成できているわけです。
行政書士又は行政書士法人は、それぞれ行政書士又は行政書士法人の名称を用いて、他人の求めに応じ、ゴルフ場利用税、自動車税、軽自動車税、事業所税その他政令で定める租税に関し税務書類の作成を業として行うことができる。
法第五十一条の二に規定する政令で定める租税は、石油ガス税、不動産取得税、道府県たばこ税(都たばこ税を含む。)、市町村たばこ税(特別区たばこ税を含む。)、特別土地保有税及び入湯税とする。
(2)労働社会保険諸法令に基づく申請書等・帳簿書類(一定の行政書士のみ)
こちらは、「昭和55年8月末日の時点で行政書士であり、かつ、現在まで継続して行政書士である者」に限り行うことができます。
この法律の施行の際現に行政書士会に入会している行政書士である者は、当分の間、この法律による改正後の行政書士法第一条第二項の規定にかかわらず、他人の依頼を受け報酬を得て、社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第二条第一項第一号及び第二号に掲げる事務を業とすることができる。
社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二~一の六 (省略)
二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。
三 (省略)