【行政書士の経理】自分でできる!確定申告を行うために必要なことを徹底解説!
「行政書士として開業してから初めての確定申告なんだけど、どうやってやればいいんだ?」
「会社員のときは特に何もしなくてもよかったからな・・・」
そうです。
行政書士として独立開業すると、お金に関することも自分でやらなければなりません。
そのあたりについて、10年以上、行政書士として毎年確定申告しているわたしがご説明します。
青色申告しよう
(行政書士法人を設立する場合を除き)行政書士で独立開業すると一人の個人事業主となります。
なので、毎年、自分で一年分の売り上げや経費を計算して確定申告をしなければなりません。
そして、確定申告をする方法としては下記の2つがあります。
- 青色申告
- 白色申告
どちらを選べばいいかというと、税制上有利な取扱いを受けられる「青色申告」を選択するのがおすすめです。
【青色申告】4つのメリット
青色申告には4つのメリットがあります。
- 青色申告特別控除が受けられる
- 赤字を3年間にわたって繰り越せる
- 家族従業員に給料を払える
- 貸倒引当金を設定できる
ひとつずつ見ていきます。
(1)青色申告特別控除が受けられる
所得から65万円または55万円または10万円を差し引くことができる特典です。
- 65万円
正規の簿記「複式簿記」で記帳し、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行う場合 - 55万円
正規の簿記「複式簿記」で記帳するが、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行わない場合 - 10万円
65万円または55万円控除の要件に該当しない場合
その分、節税につながります。
節税だけでなく、この控除は国民健康保険料の減額にもつながります(確定申告書の所得金額欄の数字が減るので)。
なので、基本的には最大の65万円控除を受けることが望ましいです。
「複式簿記」という難しい用語が出てきましたが特に気にする必要はありません。
下記でおすすめする本を見ながら経理処理を行えば、自働的にそれを満たしたものになります。
「電子帳簿保存」というのも、ここでは特に気にする必要はありません。
確定申告手続きは「e-Taxによる電子申告」で行えばよいでしょう。
e-Taxによる電子申告を利用する方法には、下記の2つがあります。
- 【原則】「ICカードリーダー」と「マイナンバーカード」を用いた方法
- 【例外】ID・パスワード方式
※税務署で事前に手続きをしてIDなどを発行してもらう。暫定的なのでいずれ廃止される予定
(2)赤字を3年間にわたって繰り越せる
事業で赤字が出た場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せます。
確定申告書の所得金額欄の数字を減らせますので、これまた節税だけではなく、国民健康保険料の減額にもつながります。
なのできっちりと利用しましょう。
開業初年度などは経費が掛かる割には仕事(売上)が少ない傾向にありますので、赤字が発生しやすいと思います。
わたしもそうでした。
いま改めて振り返ってみると、わたしの場合は開業初年度で出た赤字を3年目の年で清算しておりました。
2年目も黒字でしたが、所得金額が小さかったので使わなかったようです。
そのようなこともありますので、赤字が出た年のことを忘れてしまわないように注意する必要はあります。
(3)家族従業員に給料を払える
収入を家族に分散することにより家族全体として税金や国民健康保険料を安くできます。
たとえば夫が事業主で妻に給料を支払うと
- 夫の確定申告書の所得金額欄の数字が減るので、夫にかかる税金や国民健康保険料が安くなる
- 給料を受け取った妻は給与所得控除(55万円)が使えるので、家族全体として所得金額欄の数字が減る。その分、家族全体として税金や国民健康保険料が安くなる
- 国民健康保険の所得割基礎額について、被保険者ごとに基礎控除があるので、その分、家族全体として国民健康保険料の所得割額が減る
- 夫婦それぞれが所得税法上の各種控除(確定申告書の「所得から差し引かれる金額(基礎控除など)」欄)が受けられるので、その分節税につながる
また、所得税の税率は、所得が多くなるにつれて段階的に税率が高くなります(所得が多いほど、所得に対する税金の占める割合が高くなる)。
そのあたりを考慮して所得を分散することにより、高い税率がかかっていた方にそれよりも低い税率が適用されるようにすれば、家族全体で見ても所得税が安くなります。
(4)貸倒引当金を設定できる
貸倒引当金というのは、売掛金・貸付金などの貸金の貸し倒れによる損失の見込み額として、年末時点での貸金残高の5.5%(金融業の場合は3.3%)を計上し、それを経費にできるというものです。
ただし、経費にした金額は来年の収入に戻す必要があるなど、ちょっと使い方が難しい部分もありますので、わたしは利用していません。
この一冊を読めば経理の仕方がだいたいわかる!おすすめ本のご紹介
- 『3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』
まずはこの一冊を読んでください。
この本は確定申告につながる作業全般に関して書かれている本です。
- 青色申告するための手続き
- 帳簿をつけるための準備・必要なもの
- 経理書類の整理の仕方
- 月々の記帳の仕方
- 決算書の作成
- 確定申告手続きに関すること
- よくある疑問に関すること など
基本的には、この本に書かれている通りに、日々の作業や月々の作業を行っていけばOKです。
2009年に発売され、現在は新版が売っております。
(わたしが)開業してから現在まで、本屋さんへ行ってウロウロすると、常に目に入ってくる(置いてある)イメージです。
それだけ長く売れ続けているということでしょう。
もっと節税や国民健康保険料の節約につながる!一歩踏み込んだ内容のおすすめ本
- 『フリーランス&個人事業主 確定申告でお金を残す!元国税調査官のウラ技』
2014年に初版が発行され、版を重ねて、現在まで発行され続けております。
上記の本と合わせて、こちらの本を読むこともおすすめです。
こちらの本には、主に節税に関することが載っております。
それも、一歩踏み込んだ内容です。
例えば、自宅を事務所とする場合、その自宅の家賃(持ち家の場合は減価償却費)の事務所使用分は経費にできます。
事務所使用分をどのように算出するかというと、「自宅全体の面積に対する事務所使用分の面積の割合」で計算します。
と・・・ここまでであれば、結構いろいろな本で見る内容です。
その内容ならいろんな本で見るよね・・・
しかし、この本はここで終わりません。
「本当はもっと経費にできる可能性があるんです!」ということを教えてくれます。
どうしてそんなことが言えるのか?
そのあたりの考え方を知ることができます。
ワォ! 目からウロコ!
でも、確かにそうだよね。フムフム・・・
わたしは開業からずっと自宅兼事務所ですので、この本をもっと早く知っていたら、より多くの経費を計上していたかと思います。
その結果、税金や国民健康保険料の節約につながっていたはず・・・。
もっと早く見たかったな・・・この本・・・
本当にそう思います。
・・・とまぁ、さまざまな節税につながることなどが載っております。
なので、これから新しく行政書士として開業される方は、ぜひこの本をはじめに見ていただきたいです。
上記のほかにも、税務署員側の視点の話や経費の様々な積み上げ方など、いろいろと役に立つことが載っております。
確定申告(青色申告)するために必要なもの6つ
確定申告(青色申告)するためには下記のようなものが必要です。
- 会計ソフト
- クレジットカード
- レターケース
- フラットファイル
- ドキュメントファイル
- ICカードリーダー
基本的にはどれも上記の本『3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』で必要なものとして載っているものです。
(1)会計ソフト
青色申告をするためには会計ソフトは欠かせません。
上記の本『3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』では「やよいの青色申告」を例に解説されております(30日間限定の体験版がダウンロードできます)。
ちなみに、わたしが使っているものは株式会社コラボ社の「わくわく青色申告」というものです。
開業以来ずっと、10年以上使っております。
10年以上前のわたしは、なぜこれを選んだかというと、はっきりとは覚えていません。
たぶん、「安かったから」かな・・・
パソコンにインストールして使うタイプ(インストール型)です。
現在は、どちらかというと、インストール型より、クラウド型の方が主流になっている印象です。
クラウド型では下記が有名です。
- やよいの青色申告 オンライン
- マネーフォワード クラウド確定申告
- freee会計
かかる費用については、インストール型は購入時に一度だけ支払いをすればいい一方、クラウド型は月払い(または年払い)の継続課金制です。
そうみるとインストール型の方が安く感じるかもしれませんが、インストール型はときどき(制度改正時などに)バージョンアップをしなければならないときがあります。
その際は、また料金がかかります(些細なアップデートは無料)。
わたしが使っている「わくわく青色申告」も現在のバージョンは「8」なのですが、「『9』へバージョンアップはどうですか?」というメールが現在(2023年11月時点)きております。
優待価格ですが7,700円かかります。
(優待価格の)期限までにはバージョンアップする予定です。
あ~あ、またお金かかるのか・・・これで何度目だ?・・・
一方、クラウド型は、バージョンアップに別途料金がかかることは基本的にはないと思います。
料金的にどちらがお得かは一概には言えないですが、「インストール型はバージョンアップ時に再度お金がかかる」ということは認識しておきたいところです。
インストール型とクラウド型、どちらにもメリット・デメリットがあります(下表参照▼)。
事前にそれらをチェックのうえ、導入するようにしましょう。
インストール型 | クラウド型 | |
支払い | 1回(買い切り) | 継続課金(月払い、年払い) |
バージョンアップ作業 | 手動 | 自動 |
バージョンアップ料金 | 別途必要 | 基本不要 |
使用環境 | 1台のPCにインストールして使用 | ネットにつながっていればどの端末(PC、タブレット、スマホなど)からでも使用可 |
ネット環境 | 基本不要 | 必要 |
(2)クレジットカード
事業用のクレジットカードを一枚作っておくと便利です。
月単位で利用明細が出力できますので、管理が容易になります。
会計ソフトにはそれを見ながら入力していきます。
また、下記のようなメリットもあります。
- 支払いを先延ばしにできる
- 現金をたくさん持ち歩かなくてもよい
- 使うとポイントがたまる など
とりあえず一枚あればOKですが、「お店ごとに使い分けたい」などの場合には、複数つくってもいいかと思います。
ただし、つくりすぎると管理は大変になります。
注意しましょう。
(3)レターケース
日々、経費を使うとたまっていくレシートなどを整理するために使います。
- 後日銀行口座から引き落とされるもの → 「預金 払済み」棚へ
- 現金で支払ったもの → 「現金 払済み」棚へ
- クレジットカードで支払ったもの → 「カード払」棚へ
という感じで、引き出しごとにレシートなどを分けて入れていきます。▼
(4)フラットファイル
(自社発行の)請求書を分けるために使用します。
「未入金のもの」「入金があったもの」に分けて、それぞれのファイルに綴じていきます。
(5)ドキュメントファイル
13ポケットあるドキュメントファイルが必要です。
12ポケット分は毎月の書類入れに、残りの1ポケットにはその年の決算書や確定申告書関係の書類を入れておきます。
毎月1ポケットずつ使用し、そこに1ヶ月分の請求書・領収書・クレジットカード明細などをひとまとめにして入れておきます。
(6)ICカードリーダー
e-Taxで確定申告するために必要です(ID・パスワード方式で確定申告をする場合を除く)。
わたしが使っているものは下記になります。
- RC-S300(ソニー社製)
価格も安めで電子車検証の読取にも使用できます。
自動車手続き関係の仕事をする際にも役立ちます。
ちなみに、マイナンバーカード読取対応のスマホがあれば、ICカードリーダーが無くてもe-Taxによる申告が可能です。
パソコンで確定申告書を作成した場合も、スマホのアプリ(マイナポータルアプリ)でパソコン上に表示されたQRコードを読み取れば、e-Taxによる申告ができます。
大きい画面で見た方が安心だから、わたしはすべてパソコンでやっているよ
経理作業の流れ
- 日々使用した現金やクレジットカードの領収書、銀行引き落とし予定の(他社からの)請求書をレターケースに入れる
- (自社発行の)請求書を売上ファイルに綴じる(未入金・入金済、どちらかのフラットファイルに)
- 上記のレターケースに入れた領収書などを取り出し、ひとつひとつ入力
- 事業用の銀行口座の入出金明細をダウンロードし、売上ファイルに入れてある請求書と照らし合わせるなどして入力
- クレジットカードの利用明細をダウンロードし入力
- 事業に必要なお金を個人(プライベート)の財布から支払ったものも忘れず入力 など
STEP1-2の作業を毎月繰り返します。
翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います(決算書の作成→確定申告手続き)。
勘定科目はだいたいでOK
勘定科目とは、会社の取引で発生する資産・負債などの増減、費用・収益を分かりやすく分類するために用いられる項目の総称です。
わたしは開業当初
この使った経費って、どの勘定科目で処理すればいいんだ?
と迷うことがありました。
結論から言うと、「そんなに神経質にならなくても大丈夫。勘定科目は、自分がしっかり把握していればなんだってOK」ということになります。
とはいえ、全然関係ない勘定科目を使うのはお勧めできません。
上記でご紹介した本にも勘定科目ごとの説明が載っておりますので、ちゃんと関連するものを使うようにはしましょう。
あんまりメチャクチャ使うと、経営成績や経営状態の分析に支障が出るから・・・
はじめに、「この費用はこの勘定科目を使う」と自分でルールを決めて、それをずっと継続適用すればいいでしょう。
わたしは開業するとき、上記でご紹介した本とは別に、勘定科目について特化した専門書も買ってしまいました。
でも、失敗でした。
そんなもの不要でした。
先日、事務所を整理する際に捨てたよ・・・
皆さんも、そんなもの不要ですので、買わないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ここまで長々と説明してきましたので、確定申告するのが難しく感じたかもしれません。
しかし、考え方は単純です。
下記をちゃんと読み、そこに書かれている通りにやれば基本的にはOKです。
- 『3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』
「どうしたらいいか」がだいたい分かる!
あとは、
(わたしは開業当初に読めなかったので)これから開業される方は下記の本もぜひ、合わせてはじめに読んでみてください。
- 『フリーランス&個人事業主 確定申告でお金を残す!元国税調査官のウラ技』
もっと節税や国民健康保険料の節約につながる!
上記の本を読み、国税庁の
- 各種税制度の解説が載っているページ
- 確定申告書等作成コーナー
を見ながらやれば、確定申告手続きはできるかと思います。
はじめは大変だけど、毎年やってるうちにだんだん慣れてくるよ