日本政策金融公庫の創業融資|申し込む前に知っておきたい9つのポイント
「事業を新しく始める際に日本政策金融公庫からお金を借りたいと思っているんだけど、どのような準備をしたらいいのかな?」
「自己資金はいくらぐらい必要なんだろう?」
「ほかに気を付けることは?」
そこでこの記事では
- 自己資金に関すること
- 融資の手続きにおいて注意すべきこと
- 運転資金について
などを、今まで行政書士として累計5000万円以上、日本政策金融公庫などの公的融資獲得にかかわってきたわたしがご紹介します。
【自己資金】5つのポイント
- できれば3分の1以上が理想
- 見せ金はダメ
- 家族からの応援は自己資金として見てもらえる可能性あり
- 自己資金を減らす前に、まずは真っ先に融資を申し込むことが大切
- 事前に支出した費用でも自己資金として見てもらえる可能性あり
ひとつずつ見ていきます。
【1】できれば3分の1以上が理想
自己資金とは、事業に必要な金額(総事業費)のうち、自分で用意する部分のお金のことです。
この金額は、できれば総事業費の3分の1以上用意できるのが望ましいです。
ただ、かならず3分の1以上の金額が必要かというと、そうでもありません。
日本政策金融公庫からお金を借りる際、以前は3分の1以上や10分の1以上の自己資金が必要という時期がありました。
しかし、現在(2024年5月)、日本政策金融公庫のホームページを見てみると、そのような記載は見当たりません。
代わりに、日本政策金融公庫のホームページ内に下記のような記載があります。
- 一概には言えませんが、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」のデータによると、創業資金調達総額に占める自己資金の割合は24%となっています。
なので、まとめると、自己資金は
- 少なくとも25%ほど
- できれば3割(30%)~3分の1(33.3…%)
以上用意できるのが望ましいと言えそうです。
【2】見せ金はダメ
自己資金がないからといって、一時的にどこかから借りてきて、それを自己資金として見せるような行為はNGです。
自己資金は、実際に事業で必要となるお金という意味だけではなく、事業開始に向けてこれまで準備してきたという熱意の表れでもあります。
自己資金が準備できていなかったということは、今まで事業について熱心に考えてこず、思い付きで始めるのでは?という風に思われても仕方がありません。
これまで頑張ってコツコツとお金をためてきた姿勢が評価される
融資の面談の際には、通帳(お金の動き)もチェックされますので、このことは通帳を見ればすぐにわかります。
【3】家族からの応援は自己資金として見てもらえる可能性あり
たとえば下記のような場合は自己資金として見てもらえる可能性があります。
- 親が自分名義で貯めてきてくれたお金
- 親からの贈与
2の場合、念の為、それがあったことを証明する書類(贈与契約書など)を作成しておきましょう。
ただし、それだけではなく、審査の過程においては、贈与者の通帳の提示を求められたり、贈与者への確認などが行われる場合もあるようです。
実際にお金をもらう際は、贈与者の銀行口座から自分の銀行口座へ直接振り込んでもらうようにして、お金の流れがはっきり分かるようにしておきましょう。
税金(贈与税)についても注意!▼
また、贈与を受ける場合は贈与税のことも意識しておく必要があります。
年間110万円までの贈与であれば税金がかかりませんので、贈与を受ける場合はそれ以内の金額にしておいたほうがよいかもしれませんね。
【4】自己資金を減らす前に、まずは真っ先に融資を申し込むことが大切
開業する際に融資を利用することを決めたならば、いろいろな買い物などをして自己資金を減らしてしまう前に、まずは真っ先に融資の申し込みを行うことが大切です。
上記でご紹介しましたが、融資においては自己資金の金額がひとつ重要な要素となってきます。
自己資金として貯めてきたお金を事前に使った場合、その部分が自己資金として見てもらえなくなる可能性が生じてしまいます。
その分、借入できる金額にも影響を与えかねませんので注意しましょう。
【5】事前に支出した費用でも自己資金として見てもらえる可能性あり
ただし、(上記【4】のように)融資を申し込む前にお金を使ってしまっても、それが
- 事業に関して使われた費用で
- 領収書等で使ったことが証明できる
場合は、自己資金として見てもらえる可能性があります。
なので、もしもそのような場合は、領収書等は必ず保管しておくようにしましょう。
融資申請前の支出が、事業に全く関係なく個人的な支出であるような場合は、自己資金として見てもらえないのは言うまでもありません。
【6】運転資金の借り入れは3ヶ月分ほどが妥当
借入金額のうちの運転資金については3ヶ月分ほどが妥当です。
行政書士を個人事業として開業する場合、運転資金としては下記のようなものがあります。
(※このブログは、行政書士の独立開業を支援することをひとつの目的として運営しております)
- 家賃
- 支払利息
- 通信費(電話・FAX・携帯電話・インターネット接続料・郵送代)
- 交通費(ガソリン代等)
- 出張費
- 研修受講料
- 事務用品費
- 消耗品費
- 水道光熱費(ガス・水道・電気)
- 広告宣伝費(ホームページ維持費・インターネット広告等)
- 車両維持費(保険料・車検代・修繕費・部品代・税金等)
- 行政書士会費・支部会費・政治連盟会費等
- 外注費(会社設立業務にかかる司法書士への手数料等)
- 新聞図書費
- その他費用
ちなみに、個人事業の場合は自分の給料は人件費には含めません(経費にはなりません)。
だいたい上記のような項目の合計額を1ヶ月分として、それを×3(3ヶ月分)したものが、運転資金として申し込む金額になるかと思います。
個別に見てもらえる費用
上記とは別に、開業前にかかっていた費用については個別に認められる可能性があります。
例えば、さまざまな準備などでどうしても開業前に事務所を借りておかなければならなかった場合、開業前のその数ヶ月分の家賃も運転資金として見てもらえる可能性があります。
そのような費用は、ほかにもあるかもしれませんので確認してみましょう。
【7】税金をちゃんと払っているか確認される
日本政策金融公庫の正式名称は「株式会社日本政策金融公庫」といい、「株式会社日本政策金融公庫法」という法律に基づいて運営されている公的な金融機関です。
ということもあり、融資申込者がきちんと税金を払っているか確認される場合があります。
わたしが10年以上前の行政書士開業の際の融資面談を受けた際に、なにか税金に関する納税証明書などを提示した記憶がありますが、正確には覚えておりません。
たしか固定資産税だったかな…
しかし、わたしが融資をサポートしたお客さまの一人は住民税に関する納税証明の提示を求められた方もいらっしゃいました。
何の税金に関する納税証明書の提示を求められるかは面談時に指示されますので、それに対応できるよう、事前に納税のうえ、その証明書等はしっかり保管しておくようにしましょう。
【8】通帳はしっかりチェックされる
融資の面談の際に、自己資金の出どころや自己資金を積み立ててきた経緯の確認などということで、通帳はしっかりチェックされるイメージです。
なので、通帳は事前に記帳しておきましょう。
インターネットバンキングの場合は一定年数分印刷して持参します。
日常のお金の動きとはちょっと違うような大きな入出金などがある場合は、それについて聞かれる可能性がありますので、しっかりと答えられるように事前に準備しておきましょう。
【9】基本的には一発勝負
「簡単にお金を借りられるほど融資は甘くない」と心得ておいた方がいいでしょう。
たいした準備もせず、かる~い気持ちで申し込むと「ダメ」ということで、融資NGになるかもしれません。
そうなると、すぐには再度の申込みはできない(もしくは、やっても同じ)ということで、一定期間(最低でも6ヶ月程度)空けなければ再度の挑戦ができないと言われています。
なので、上記でご紹介した自己資金などの準備、創業計画書の作成、面談対策など、事前にしっかりと準備したうえで融資を申し込むようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは下記のとおりです。
- 自己資金は3分の1程度貯めておくことが必要
- 融資を受ける場合、支出よりも融資の申込が先
- 運転資金の借り入れは3ヶ月分程度
- 融資の審査においては、税金の支払い状況や通帳がチェックされる
- 基本的には一発勝負
すべてに注意する必要がありますが、特に自己資金に関することが最も重要だと思います。
自己資金は、本来、融資を受けるためだけのものではなく開業後の活動資金になるものだからです。
借入依存度が高すぎると、毎月の返済や利息の負担が重くのしかかり、想定通りに事が進まなかった場合には資金繰りが大変になる可能性があります。
そうならないためにも、自己資金と借入金のバランスを考え、ゆとりを持った資金計画を立てることが大切です。