創業融資|日本政策金融公庫の創業計画書をもとに書き方を解説(経営能力の有無)
「創業計画書に記入する内容について、具体的にどのように書いたらいいのか分からない…」
「融資を受けるためには、どのように書いたらいいんだろう…」
今まで事業を興したことがない人は、創業計画書について、どのように記入していったらいいのか分からないですよね。
そこでこの記事では
- 創業計画書の様式に関すること
- 創業計画書の下記点についての具体的な書き方
・創業の動機等
・経営者の略歴等
・取扱商品・サービス
・取引先・取引関係等
などについて、今まで行政書士として累計5000万円以上、日本政策金融公庫などの公的融資獲得にかかわってきたわたしがご説明します。
日本政策金融公庫の創業計画書をもとに書き方を解説
金融機関から借り入れる際に必要となる創業計画書について、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできる創業計画書を主な例にとり、一つずつ項目を見ていきます。
各項目について
- なぜこうなるのか?
- 本当は何が求められているのか?
といった事を中心に説明するとともに、効果的な書き方について解説していきたいと思います。
日本政策金融公庫の記入例だけでは融資を受けるのは難しい
日本政策金融公庫のホームページにも各業種についての記入例が掲載してあります。
しかし、これを見ただけでは、融資を受けるには、なかなか難しい面があります。
それはなぜかと言うと
- 記入例は全体的に注釈が乏しく、内容についての説明が不十分
- 「融資を受けるには、どのように書けばよいのか?」という視点で説明されていない
などといった事があるからです。
ただ、ひとつの参考となるものですので、この記事と併せてご覧になられたらよろしいかと思います。
なお、制度融資を利用する際に提出する創業計画書についても、書き方に大きな違いはありません。
創業計画書の様式は自分でWordなどで作成する
日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできる創業計画書の様式では、記入できるスペースが小さくて足りません。
なので、日本政策金融公庫の創業計画書を参考に、自分でWordなどで一から作成するといいでしょう。
記入する項目は基本的には日本政策金融公庫の様式をマネすればOK⇒項目が足りなければ自由に追加してOK
創業計画書を一から自分で作成するにしても、創業計画書に記入する内容は、基本的には日本政策金融公庫の様式に記載されている項目について記入していけばいいでしょう。
それだけでは自分の考えを正確に表現できない場合は、下記ページのポイントを意識しながら適宜追加していく形でいいと思います。
「大切なことを伝えるためには、こういった項目も入れておいた方がいいな」というのがあれば、ある程度自由に追加すればいいでしょう。
それでは、次から実際に各項目についての書き方を見ていきましょう。
創業の動機等
ここでは下記点について見ていきます。
- 業種
- 創業時期または創業予定時期
- 創業の目的・動機
業種
- 行政書士業
- 自動車整備業
- カーショップ事業
- 住宅リフォーム業
- ソフトウェア開発業
- 釣り関連製品の製造販売
- 各種メディア媒体やイベントにおける企画、編集、執筆、講演
など、ある程度自由に記入すればいいでしょう。
業種としてはシンプルだけど、それについて具体的に説明しようとすると一般の人にはわかりにくいような事業内容の場合は、それについて理解しやすいように説明文(図や表含む)を添えてもいいと思います。
創業時期または創業予定時期
おおよそでいいと思いますが、下記のように記入してもいいでしょう。
- 法人 ⇒ 創業時期(法人設立日)を年月日で記入
- 個人事業 ⇒ 創業予定時期を年月で記入
※法人で融資を受ける場合は、先に法人を設立しておく必要があります。
創業予定時期に関しては、日まで確定しておく必要はありませんが、大体いつ頃というのは決めておいた方がいいでしょう。
何らかの理由で決められないのであればやむを得ませんが、そういった理由がないにもかかわらず決めていないようであれば、それはやる気を疑われます。
また、開業までの期間が長すぎると、「本当に今必要なのか?」「なぜ、そんなに早い段階で申し込むのか?」疑問に思われます。
逆に開業までの期間が短すぎると、「なぜもっと早く申し込みに来なかったのか?」と思われるとともに、事業の計画性も疑われかねません。
融資の申し込みから実行までに1ヶ月から1ヶ月半かかりますので、最適なタイミングで申し込むとともに、余裕をもった事業計画を立てるようにしましょう。
創業の目的・動機
ここでは「なぜ、その事業を始める気になったのか?」を聞かれるとともに、その事業についてどれだけの準備(場所や設備など)や覚悟ができているかなどが判断されます。
可能であれば、営業場所、仕入れ先や販売先の見通し程度に関しても、この中で触れておきたいところです。
さて、それではひとつ例を見てみます。
- 自分の経験を生かしたい
- かねてから自分の店を持つことが夢だった
- ○○駅の近くによい店舗が見つかったため
この箇所は、どれだけ強い思いでこの事業を始めようと思ったのか、いわば「事業に対する思い入れや情熱」をアピールする項目です。
上記例を見てみると、ただ単に物理的な準備が整ったので開業したいという印象を受けますが、これではその思いが伝わるとは言い難いです。
では、どうすればいいのでしょう?
表現方法は人それぞれいろいろありますが、大切なことは気持ちを素直に前面に押し出し、第三者にもきちんと自分の思いが伝わるような文章を組み立てる事です。
【文章の組み立て方の一例】
- 普段の生活の中で不便に感じる事があった、こんな問題点があった
- 前職で発見や改良すべき点に気付いたが、当時の状況では実現できない事情があった
- あることをきっかけに以前からこの業種に興味があった
- こういうことで世の中の役に立ちたい
- こんないい事を思いついた。それを使えばこんなことができる。こんなに便利になる。だからこれを世の中に広めていきたい
- こんな未来を実現したい。だからこのビジネスをやって皆さんに喜んでもらいたい
- 解決策を考えたところ、実現可能性があることが分かった
- これまでの経験を生かして社会的にも貢献できると思った
- 同じ考えを持つ人と知り合い、共同で経営することが決まった
- 事業としての可能性を検討した結果、十分に実現可能だと判断したため今回の開業に踏み切った
※可能性の検討については、できるだけ具体的に、一般的なデータも使い、根拠をもって説明する
この項目の内容に関しては後日面談でも聞かれる内容ですので、自分の言葉でしっかりと「いかにこの事業にかけているのか」という熱い思い・情熱を説明できるようにしておきましょう。
また、それとともに、最低限の準備(場所や設備など)ができていることも示しておきましょう。
経営者の略歴等
下記の点について見ていきます。
- 過去の事業経験
- 略歴
過去の事業経験
この項目は、過去に何らかの事業経験があるかどうかを尋ねるものです。
今回開業しようとしている業種と同じ業種の事業経験の有無を問うものではありません。
しかし、たとえ業種は違っても、経営者としての経験は貴重なものですので、もし何らかの事業経験があれば、どんな業種でどのくらいの期間行っていたのかについて記載しておくのがよいでしょう。
略歴
勤務先名、勤務年数、担当業務や役職、身につけた技能や保有資格等について記入します。
融資審査において、過去に、今回開業しようとしている業種と同種の経験があるかどうかがとても重要視されます。
普通に考えれば、全く経験のない業種に挑戦するよりも、経験のある業種に挑戦した方が成功する確率は高くなるのはわかりますよね。
もし、同種の経験がある場合には、自分が行ってきた仕事の内容に関して具体的に説明し、その経験・実績を十分にアピールしてください。
【同種の経験がない場合】
上記とは逆に、もし同種の経験が全く無いようでもあきらめないでください。
たしかに、同種の経験が無いよりはあった方がいいでしょう。
しかし、同種の経験がない場合でも、例えば
- (フランチャイズとして参加して事業を創める場合)開業前の加盟店でのトレーニング
- 過去に同種のアルバイト経験がある
- 失業中に同種の職業訓練(※)を受けたもので比較的期間の長いもの
などは経験として見てもらえる可能性があります。
※職業訓練とは、ハローワークで失業の認定を受けた人を対象に、再就職を支援することを目的として、職業に必要な技能を習得させる訓練制度のこと
また、業種が違うので一見関係なさそうに見える経験も、職業経験として見てもらえる可能性があります。
例えば、居酒屋で働いていたころの接客、食材の在庫管理、お金の管理、店舗の清掃管理などは、そっくりそのまま衣料品販売業での接客、商品の在庫管理、お金の管理、店舗の清掃管理につながっていきます。
以上の事からも、同種の経験が全くないからと言ってただ漫然と書くだけでなく、自分の職業経験を棚卸することによって、「今回開業しようとしている業種に何かつながる部分はないか?」という事を意識しながら、自分の経歴を記載していくとよいでしょう。
取扱商品・サービス
この欄は、基本的には日本政策金融公庫の記載例を参考に書けばよいでしょう。
また、ここで金額(単価等)を記入する場合は、後で出てくる収支予定表の金額(単価)と食い違いが出ないよう、しっかり整合性をとっておいてください。
整合性がとれていない創業計画書では、その内容が伝わりません(というか、逆に混乱する)。
見る人にとってはストレスがたまるとともに、また評価も下がることになってしまうでしょう。
商品・サービスがわかるものを持参する
まだ事業が始まっていない段階での商品やサービスについては、存在していないものに対して判断してもらうことになります。
- もしあればメニューやカタログ、実際の商品を持参
- 業務フロー図などを事前に作成
するなどし、見る人にとって分かりやすく具体的なイメージを想像できるようにもっていくことが、ポイントアップにつながります。
セールスポイント
ここでは、自分の売りになるところ、言い換えれば自分にとって「得意で同業他社よりも優れている」と感じる部分(強み)を書きます。
強みを書き出していく際には、「差別化」と「説得力」の2つのキーワードを意識して書き出していくようにします。
実際のお店などを想像しても、そこらへんにもうすでにあるようなお店と何ら変わり映えがしなければ、お客さまにとってはなかなか「よし行ってみよう!」とはなりません。
「うちはこういうお店で、この部分が強いんです。だから、こういうのをお望みのお客さんにとっては役に立つと思います」というのがなかったら、なかなか難しいでしょう。
取引先・取引関係等
この欄も基本的には日本政策金融公庫の記載例を参考に書けばよいでしょう。
もし、仕入や販売についての契約書や注文書などがあれば必ず添付して下さい。
また、販売条件や仕入条件は必ず確認しておきましょう。
お金が出てから入るまでの期間に注意
例えば支払い条件と回収条件が下記だったとします。
- 支払い条件 ⇒ 現金即金支払い
- 回収条件 ⇒ 末日締め、翌月末日回収
上記のような取引条件の場合、例えばもし月頭に現金即金払いで仕入れたものが、次の月の初めに掛売で売れたとします。
そのような場合には、現金が出ていってしまってからその分の売上金が回収されるまで、約3ヶ月の期間がかかることになります。
その間、資金繰りがうまくいくよう十分に考慮するとともに営業資金の確保が必要となります。
取引先を選ぶ際の注意
できるだけ条件の良い販売先や仕入先と取引をしたいと思いますが、ここで一つ注意しなければならないことがあります。
それは取引先を条件だけで判断せず、慎重に選ぶという事です。
もし万が一、架空の業者やいい加減な業者と取引をしてしまうと大変な事になります。
そのためには取引を始める前に相手の事を多少調べる必要があります。
最低でもその業者のホームページを確認することはもちろん、相手が法人であれば会社の登記簿謄本を取り寄せてみたり、実際の所在地へ出向き、営業の実態があるかを確認したりします。
インターネットなどを活用し複数の業者の中から比較検討し、少しでも条件の良いところを選ぶとともに、その経緯や結果に関しては、仕入先比較検討表なども使って、創業計画書上でも積極的にアピールしましょう。
どの業者から何がいくらでどれだけ入ってくるか具体的に書く
日本政策金融公庫の創業計画書の様式にある仕入先についての項目だけでは、実際にどの業者から何がいくらでどれだけ入ってくるかが分かりません。
なので、実際の創業計画書には、下記のような代表的な品目、予定仕入単価、予定仕入数量などを記載しておきましょう。
- 【取引先名】A社
- 【所在地等】富山市○○町1-2
- 【品目】一般雑貨
- 【予定単価】700円
- 【予定数量】800個
販売先に関しても、同じように記入しておきましょう。
もし、開業の時点で特定の販売先が確保されているような場合には、売上の見込みがあるという事で高い評価が得られますので、必ず記載し、面談でも十分にアピールしましょう。
計画作成の段階で相手先から発注予約書や契約書などがもらえるときは必ずそれらを取得し、売り上げ見込み先として最大限に活用するとともに、収支計画に反映させましょう。
開業場所について
創業計画書には、開業場所についての記載はありませんが、開業するにあたって予定場所(物件)が決まっていることは融資の際の大前提になります。
また、それによって初めて売上予測が立てられる業種もあるでしょう。
しかし、ここでいう「開業予定場所(物件)」が決まっているという事の意味は、必ずしも融資の申し込み前までに賃貸借契が結ばれていなければならないという事ではありません。
この時点では、「事業の候補地」と「そこを借りる意思」が明確に示せればそれで構わないものとされているようです。
結局これはどういう事かと言えば、融資申込に当たっては、仮契約や手付金が交付されている証明の資料という事ではなく、その物件を賃借する意思が客観的にわかる資料を提出できればよいという事です。
実際の融資申し込みの際に、金融機関の担当者に開業場所に関してどのような資料を用意したらよいか確認しておきましょう。
業種によっては場所に制限がある
ただし、開業しようとする業種によっては、借りる場所に関して制約がある場合がある(風営法で定められているお店や労働者派遣事業の事業所など)他、計画内容と借りる場所の実態が合わない場合には、融資が認められない場合があるので注意しましょう。