行政書士の義務「作成した書類に記名・職印押印」の仕方を実例も交えながら解説
「やっと行政書士として独立開業したぞ~~いよいよ業務のはじまりだ~」
「でも、試験勉強のときに学んだ『行政書士が作成した書類に記名・職印押印』っていうのは、いったいどうやるんだろう…」
行政書士として独立開業したら、わからないことがいっぱいです。
そこでこの記事では
- 行政書士が作成した書類には、記名して職印を押さなければならないこと
を取り上げ、それについて、行政書士を10年以上続けているわたしが実例も交えながらご説明します。
行政書士の記名・職印押印義務
行政書士は、作成した書類に記名して職印を押さなければなりません。
行政書士は、作成した書類に記名して職印を押さなければならない。
【余談】
ちなみに余談ですが、わたしが勉強していたころ(2003~2004年頃)は、上記文言のなかに
- 「(作成した書類)の末尾又は欄外に」
- 「作成の年月日を附記し」
という文言も入っておりました。
職印を押す場所に関する指定や、職印を押すだけではなく書類の作成年月日を記載する必要があったということですね。
現在はこれらの文言は無くなっております。
正直、細かいことまではよくわからない
「作成した書類に記名して職印を押さなければならない」と言っても、いろいろ疑問が生まれそうですね。
- 作成した書類すべてに1枚1枚記名して職印を押すの?
- 書類の(具体的に)どこに記名して職印を押せばいいの?
わたしも行政書士開業当時、このことについてよくわからなかったので、当時の富山県行政書士会の会長に新人研修会のときに聞いてみました。
しかし、いくらか話が返ってきたと思いますが、結局シンプルにわかりやすい答えは返ってきませんでした。
【結論】おそらくこういうことだろう(記名・職印押印の仕方)
結論を先に言うと、下記のようになるかと思います。
- 役所の手続きマニュアルや担当者の話などにて記名押印の仕方が指定されている場合はそれに従う
- 1以外の場合は、申請書・届出書の枠外・欄外の適切な場所に記名・職印押印する
世の中には数多くの行政手続きがあります。
そのひとつひとつで「行政書士法施行規則にかかる行政書士の記名・職印押印はこのようにしなさい」と説明されているわけではありません。
したがって、「行政書士が作成した書類には記名・職印押印しなさい」と言われても、具体的にどこにどうやって記名・職印押印したらいいのか迷うところです。
ただ、そのような状況の中で、わたしの経験上・調査上で言うと、結論は上記のようになります。
すべての書類1枚1枚に記名・職印押印する必要はなさそうだね
- 指定されている場合 ⇒ そこに
- それ以外は ⇒ 申請書・届出書の枠外・欄外に
実際の例をご紹介
わたしが行っている業務を例にして、下記でご紹介します。
- 建設業許可申請の場合
- 車庫証明申請の場合
- 融資業務における創業計画書の作成の場合
(1)建設業許可申請の場合
わたしが業務を行っている富山県の場合、建設業許可申請にかかる行政書士の記名・職印押印については、富山県の手続きマニュアル内に下記のような記載があります。
上記画像の(ア)に、行政書士の記名・押印に関する言及がありますね。
その場合には「上段に申請者名・届出者名を記載してください」ともあります。
なので、わたしもそのようにしております。▼
(2)車庫証明申請の場合
車庫証明に関しては、わたしは申請書右下にある連絡先欄に記名・職印押印しております。▼
車庫証明業務は、業務の性質上、必ずしも「すべての書類の作成をお願い」ということにはならないですね。
依頼元や申請者本人において、ある程度事前に書類が作成されているケースも多々あります。
なので、わたしは、申請書・届出書の作成を依頼された場合のみ、それに記名・職印押印するようにしております(ほかの書類(例えば配置図など)の作成を依頼された場合、それには記名・職印押印していない)。
(3)融資業務における創業計画書の作成の場合
申請書・届出書の類ではないですが、融資業務における創業計画書の作成については、末尾に記名・職印押印しております。▼
役所ではあまり気にされていないイメージ
「行政書士が作成した書類に記名・職印押印すること」について、正直なところ、役所の方ではあまり気にされていないように感じます。
建設業許可関係手続きなどのように行政書士がよく関わるような業務の場合には、上記でご紹介したように、そのマニュアル内に「行政書士が記名・職印押印すること」についての記載も見受けられます。
しかし、そうでない業務の場合は、役所の手続きマニュアルなどでは、このことに関する記載は基本見かけませんし、実際に作成した書類に行政書士の記名・職印押印がなくても、特に何も言われないイメージです。
役所の人間は、行政書士法施行規則第9条第2項のことなんて、あまり知らないんじゃないかな…
車庫証明業務について、1度警察から問い合わせが来たことがある
2022年9月中旬ごろに富山県にある射水警察署から下記のような電話がかかってきました。
○○さんは行政書士の方で間違いないですか?
なぜそのようなことを聞かれるのですか?
申請書に職印が押されてないからです
(このときは、わたしは申請書を作成していないので、連絡先欄に「行政書士+わたしの苗字」と電話番号を書いておいただけ)
今まで10年以上車庫証明業務やってますけど、一度もそんなこと言われたことないんですけど…
今月の上旬に、富山県行政書士会から県警本部の方に「行政書士が作成した書類には職印を押す」というような通達が届いているもんですから…
なぜ職印を押してないのですか?
申請書はわたしが作成したものではないので。作成されたものが送られてきた形なので
役所の方から「行政書士の記名・職印押印」について言われたのは、行政書士開業時(2010年代はじめあたり)から2024年10月までにおいては、これ1度ぐらいですかね。
まとめ⇒行政書士が作成した書類には記名・職印押印しよう
いかがでしたでしょうか?
「行政書士の作成した書類には記名・職印押印しなければならない」というルールについて説明してきました。
- 指定されている場合 ⇒ そこに
- それ以外は ⇒ 申請書・届出書の枠外・欄外の適切な場所に
開業当初は「(指定されていない場合)どこに記名・職印押印したらいいんだろう…」と迷うこともあるかもしれませんが、
正直なところ、役所の方では行政書士の記名・職印押印があろうがなかろうが、あまり気にされていない場合も多そうなので、そんなに悩まずに、申請書・届出書の欄外のどこか余白にでも記名・職印押印しておいたらいいと思います。
逆に「不要なもの(行政書士の記名・職印押印)があるから、この書類は使用不可」なんてことは言われないはず…
(もし言われたら、行政書士法施行規則に基づくものだと説明しよう)
そして、このことは結果的に「行政書士の仕事を守ること」ひいては「国民の権利を守ること」につながります。