行政書士の領収証|様式や書き方、印紙、インボイスなど、そのルールを徹底解説
行政書士の仕事には、お客さまから報酬などを受け取った際に交付する領収証にもルールが定められております。
そこで、この記事では、領収証に関連することとして
- どのようなルールがあるの?
- 結局、どのようにして領収証を交付したらいいの?
- 印紙を貼る必要があるの?
- 源泉徴収の扱いは?
ということを、行政書士を10年以上続けているわたしがご説明します。
どのようなルールがあるの?(行政書士が交付する領収証)
まず、お客さまから報酬などを受け取った際に行政書士が交付する領収証にはどのようなルールがあるか、見ていきたいと思います。
堅苦しい法令がいっぱい出てくるよ~
行政書士法施行規則
行政書士法施行規則に下記のように定められております。
行政書士は、依頼人から報酬を受けたときは、日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し、副本は、作成の日から五年間保存しなければならない。
ポイントは下記の3点です。
- 日本行政書士会連合会の定める様式で正副二通の領収証を作成し
- 正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し
- 副本は、作成の日から五年間保存しなければならない
次は、上記の「日本行政書士会連合会の定める様式」というところを見ていきます。
日本行政書士会連合会会則
日本行政書士会連合会会則に下記のように定められております。
省令第10条に規定する領収証の様式は、規則で定める。
「領収証の様式は、規則で定める。」とありますので、次はその規則を見ていきます。
ちなみに、「省令」というのは上記の行政書士法施行規則のことです。
日本行政書士会連合会の定める領収証の基本様式に関する規則
行政書士が交付する領収証の様式は、この規則によって具体的に定められております。
ちなみに、この規則は、行政書士になるとログインすることができる日本行政書士会連合会が運営する会員サイト「連con(レンコン)」内で閲覧することができます。
領収証の様式は具体的にどんなもの?
第2条 第1項に次のように定められております。
行政書士である会員(行政書士の使用人である行政書士又は行政書士法人の社員若しくは使用人である行政書士を除く。)及び行政書士法人である会員は領収証の基本様式に準じて領収証を作成するものとする。
「基本様式に準じて領収証を作成」とあります。
次に第3条 第1号を見てみます。
領収証の基本様式及びその取扱いについては別記の様式第1号及び第2号並びに取扱要領に定めるところによる。
一 行政書士である会員の場合は、様式第1号によるものとする。
二 (省略)
個人会員である行政書士については、この規則内で定められている様式第1号▼で領収証を作成します。
具体的には、上記のような様式の領収証を交付すればよいということですね。
その領収証、自分でパソコンで作成してもいいの?
Excelなどを使って上記のような様式の領収証を自分で作成することができます。
これも規則第2条 第2項で定められております。
2 前項の領収証は行政書士法に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則第5条から第7条の規定に基づき電磁的記録により作成することができる。
上記の文の最後の方で「電磁的記録により作成することができる。」とあります。
「行政書士法に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」というものがどんなものなのかは、ここでは省略します。
興味のある人はネットで検索してみてください。
法令の名前、ながっ
領収証にどのように記載したらいいの?(書き方)
これも、規則内の「様式第1号及び第2号に関する取扱要領」というところに定められております。
1 共通する記載方法は以下のとおりとする。
(1)「項目」欄には、 事件名、 書類作成業務、 提出手続代行業務、 提出手続代理業務、 相談業務、 顧問業務、 実地調査に基づく図面作成業務、電磁的記録に関する業務、 日当、着手金等を任意に記入できるものとする。
(2)「立替金その他」 欄には、立替金 (印紙代、 証紙代など)、 旅費・交通費等に関する事項を記載する。
(3)必要に応じて任意に段数を増設し、 記載することができる。
(1)の最後に「任意に記入できるものとする。」とありますので、「項目」欄については、ある程度自由に記載してよいものと思われます。
インボイス制度に対応するには?
これに関しても、規則内の「様式第1号及び第2号に関する取扱要領」に定められております。
3 適格請求書として使用する場合には以下のとおり記載する。
(1)適格請求書発行事業者である個人会員は氏名記載の下部、法人会員は事務所を代表する社員名記載の下部に「T(ローマ字)+数字13桁で構成される適格請求書発行事業者の登録番号」を記載する。
(2)必要に応じて備考欄に取引年月日、税率等を記載する。
わたしの領収証も、個人会員氏名の下にインボイスの登録番号を記載しております。
領収証の大きさは?⇒自由
これまた規則内の「様式第1号及び第2号に関する取扱要領」に定められております。
4 領収証の大きさは自由とする。
領収証に収入印紙は?⇒貼らなくてよい
行政書士としての業務に対する報酬を受領した際の領収証に印紙を貼らなくてもよいのはなぜですか?
行政書士としての業務に対する報酬を受領した際に発行する領収証は、印紙税法第5条 別表第1の17号の非課税物件欄の「2 営業に関しない受取書」に該当するからです。
別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。
一 別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書
二~三 (省略)
上記でご紹介した領収証「様式第1号」▼の右上にその旨の記載がありますね。
源泉徴収は?⇒不要
依頼者より行政書士としての業務に対する報酬の支払いを受ける時、その報酬に対する源泉徴収をされなくてもよいのはなぜですか?
所得税法 第204条 第1項 第2号に該当しないからです。
居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一 (省略)
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
三~八 (省略)
源泉徴収は不要ですので
- お客さま → 源泉徴収のことは気にする必要なし
- 行政書士 → 報酬を丸々受け取れる
ということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは下記のとおりです。
- 行政書士が交付する領収証にはいろいろなルールがある
- 領収証の様式は決まっている
- 領収証は、自分でパソコンで作成することができる
- 領収証に収入印紙は貼らなくてよい
- 行政書士の報酬は源泉徴収の対象ではない
行政書士が交付する領収証にはいろいろなルールがありますので、どこかで適当に買ってきた領収証を使ってはいけません。
上記でご紹介したことを踏まえて、自分でパソコンのExcelで作成するのがおすすめです。
おまけ
この記事を書くためにいろいろ情報を探していたところ、行政書士開業時に(たしか)行政書士会から買った(もらった?)請求書・領収証が出てきました。
これを見ると、全体的な構成は請求書と領収証でほぼ同じで、違うところの記載は、日付の上の部分の文言だけです。
- 請求書 → 上記のとおり請求いたします。
- 領収証 → 上記のとおり受領しました。
なので、両方をExcelで作成し、ひとつの項目に入力すればすべて(請求書と領収証とそれぞれの控)の同じ項目に同じ内容が記載されるようにすればいいでしょう。
例えば、請求書に入力すれば、領収証や控えにも同じ内容が自動で記載されるようにするということ
あとは必要な個所に数式を配置して、合計額や消費税額も自動で計算されるようにすれば便利です。
そのためのExcelの勉強も多少必要ですね。