行政書士の報酬額表の掲示義務|根拠法令、様式、作成方法などをご紹介
行政書士には、報酬額の掲示義務があります。
報酬額の掲示義務…なにそれ?
そこで、この記事では
- 報酬額の掲示義務とは?
- 根拠となる法令
- 具体的にどうすればいいか?
などを、行政書士を10年以上続けているわたしがご紹介します。
報酬額の掲示義務とは?
報酬とは、労働の対価として依頼人から受け取るお金のことですね。
- その額を
- 事務所の見やすい場所に
- 掲示しておかなければならない
ということです。
それを見れば、お客さまが「この手続きは、だいたいいくらぐらいだな」というのが分かるということですね。
この義務は、次にご紹介する法令によって定められております。
根拠法令
報酬額の掲示義務に関して、根拠となる法令は下記の4つです。
- 行政書士法
- 行政書士法施行規則
- 日本行政書士会連合会会則
- 日本行政書士会連合会の定める報酬額表の基本様式に関する規則
【1】行政書士法
行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。
上記で述べたこと(報酬額の掲示義務とは?)が書いてありますね。
【2】行政書士法施行規則
法第十条の二第一項(法第十三条の十七において準用する場合を含む。)の規定による報酬の額の掲示は、日本行政書士会連合会の定める様式に準じた表により行うものとする。
「報酬の額の掲示は、日本行政書士会連合会の定める様式に準じた表により行うものとする。」と書いてありますので、次は日本行政書士会連合会の会則を見てみます。
【3】日本行政書士会連合会会則
行政書士法施行規則(昭和26年総理府令第5号。以下「省令」という。)第3条に規定する報酬額表の様式は、規則で定める。
ここで表の様式が定められているかと思ったら、ここでは定められておらず、「規則で定める。」となっておりますね。
なので、次は、その規則を見てみます。
たらいまわしだね…
【4】日本行政書士会連合会の定める報酬額表の基本様式に関する規則
ここで具体的に、報酬額表の作り方が書いてあります。
ちなみに、この規則は、行政書士になるとログインすることができる日本行政書士会連合会が運営する会員サイト「連con(レンコン)」内で閲覧することができます。
報酬額表は基本様式を踏まえて作成しなければならない
まずはこちらを見てみましょう。
行政書士である会員(行政書士の使用人である行政書士又は行政書士法人の社員若しくは使用人である行政書士を除く。)及び行政書士法人である会員は報酬額表の基本様式を踏まえて報酬額表を作成し、掲示するものとする。
ポイントは、「報酬額表の基本様式を踏まえて報酬額表を作成し、掲示するものとする。」というところですね。
テキトーにつくって掲示してはダメということです。
報酬額表の基本様式
では次にこちらを見てみます。
報酬額表の基本様式及びその取扱いについては別記の様式第1号及び第2号並びに取扱要領に定めるところによる。
一 行政書士である会員の場合は、様式第1号によるものとする。
二 行政書士法人である会員の場合は、様式第2号によるものとする。
行政書士個人会員の場合は上記の第1号ですね。
様式第1号で作成します。
様式のほかに取扱要領という文言もありますので、次はその取扱要領を見てみます。
取扱要領(報酬額表の記載方法・大きさなど)
こちらの取扱要領に、報酬額表に関する記載方法などが少し載っております。
1 共通する記載方法は以下のとおりとする。
(1)「事件名」欄に「建設業許可申請(新規・法人・知事許可)」というように記入すること。
(2)「その他の事項」欄に消費税の扱い、着手金、立替金(印紙代、証紙代など)、旅費・交通費、日当等に関する事項を必要に応じて記入すること。
(1)について
(1)に「事件名」にどのように記載したらよいか書いてありますが、正直これだけではよくわかりません。
建設業許可業務のひとつのケースが載っているだけです。
建設業許可業務のほかの手続きについては、これを例に少しは記載できそうですが、他の手続きとなると、「はてっ、どのように記載したらいいんだろう…」となりそうです。
人によっていろいろな書き方になってしまいそうですね。
そこで、ひとつの参考となる下記方として、日本行政書士会連合会がおこなっている報酬額統計調査の結果資料を参考にしてもいいかもしれません。
報酬額統計調査の結果を見ると手続きの項目名が記載されておりますので、これを参考に、報酬額表の事件名を記載するのもひとつでしょう。
ただ、わたしが実際に作成している報酬額表の事件名としては、上記のようにならって記載してある業務もあれば、違う書き方で記載している業務もある、というような感じです。
(2)について
(2)については、消費税の扱いや着手金、立替金などに関する事項を必要に応じて書くということですね。
この説明では結構、任意に書けそうですね。
ちなみに、わたしの事務所では下記のようなことを記載しております。
- 上記は消費税込価格とします。
- 事件の種類及び金額により、着手金として、業務着手時に報酬額の一定割合の金額を事前に頂く場合があります。
- 各手続きに係る実費(印紙代、証紙代、各種税金等)は、上記金額には含まれておりません。
- 上記表の事件名欄に記載のない手続き及び上記表の金額を適用することが不適当な場合等は、別途お見積りになります。
- 報酬額の詳細等については、あわせて当事務所ホームページもご覧ください。
- 上記表の金額と当事務所ホームページ記載の金額が異なる場合は、当事務所ホームページ記載の金額を適用するものとします。
報酬額表の大きさについて
3 報酬額表の大きさは自由とする。
報酬額表の大きさは自由ということですね。
以上が、報酬額表に関する根拠法令、様式、作成方法などについてのご紹介でした。
ところで「掲示」ってどういう意味?
上記のように作成した報酬額表を、行政書士法では「掲示しなければならない。」ということでしたね。
再度、行政書士法の確認です。
行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。
「掲示」っていうとみなさん、どのように想像されますでしょうか?
一般的にはポスターのように、壁に画びょうなどで、少し高い位置に貼り付けておくイメージですよね?
壁に貼り付けておかなければならないのか…自宅事務所でお客さんなんてめったに来ないのに…
そこで「掲示」の意味を、下記の単語と合わせて、国語辞典2冊で調べてみました。
- かかげる(掲げる)
- けいじ(掲示)
- はりだす(貼り出す)
そうすると、「掲示」には「高いところにあげる」のような意味のほかに、ただ単に「人に広く知られるようにする」というような意味があることが分かりました。
必ずしも高い位置に設置しておかなくてもいいんだね
(※あくまでわたしの解釈です)
なので、わたしは報酬額表については次のようにしております。
わたしの場合(報酬額表の掲示)
まず、作成については、わたしはパソコンで作成し、A4用紙で印刷し、次のようにファイルに綴じております。
「事務所の見やすい場所に掲示」という点については、お客さまが事務所に来られた際に、お客さまの近くの見やすい場所に上記のファイルを置いておけばいいかな、という感じで対応しております。
(ただ、現在のわたしの業務の進め方においては、お客さまが事務所に来られるケースはあまりないので、このような対応をすることもあまりありません)
コスモスマーク▼
上記の報酬額表に使用している行政書士のマーク(コスモスマークと言われています)は、行政書士になるとログインすることができる日本行政書士会連合会が運営する会員サイト「連con(レンコン)」内からダウンロードすることができます。
(ネットで検索しても普通に出てきますが)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
- 行政書士には報酬額表の掲示義務がある
- その根拠となる法令
- 報酬額表の作成例
- 報酬額表の掲示の例
などをご紹介しました。
実際の業務の処理に関係することではないので、この義務については、ついつい忘れがちになりそうです。
わたしも開業からしばらくは、この点については対応していなかった…
行政書士には、このような義務があるということも覚えておきましょう。